管理職なのにあがり症、克服した経緯

あがり症(社交不安障害)になった経緯

元々、人前で話すのは好きでした。あがり症になったのは27歳の時です。友人の結婚式のスピーチがきっかけで、あがり症になりました。人前で話すのは嫌いではなかったので、結婚式での友人代表のスピーチを頼まれた時も、軽い気持ちで引き受けました。自分が参加してきた結婚式での友人代表スピーチは、歓談しながらある程度お酒がまわった状態の中盤でスピーチするものだと思い込んでいました。なので、話のネタも盛り上がるであろうと思われる面白おかしいバカみたいな内容を考えていました。しかし式当日、いざ式が始まると司会者から友人代表で指名され、いきなり私のスピーチからのスタートでした。確認しなかった自分も悪いのですが、事前に教えてほしかった。前に出てまわりを見渡すとシーンと静まり返り、みんなからの視線が私に集まっているのです。軽い気持ちで参加していた私は、あまりの緊張感で足が震え始めました。新郎新婦に祝辞を述べたあと、予定していたで話はまずいと思い、その場で内容を変えようとしてしまい、更に自分を追い込む形になってしまいました。友人が高校に転校してきた時のエピソードを話し始めましたが、話していると声が震え始め、喉が詰まるような感じがして声がだし難くなりました。手も震えていることに気づきます。なにを話したかよく覚えていません。今でも思い出したくもありません。スピーチが終わって席に戻り周りの人たちの顔を見ると、自分が恥ずかしく情けなくてたまりませんでした。周りの友人もその当時はまだ若かったこともあると思うのですが、特に気の利いた言葉を掛けてくれることもありませんでした。自分を落ち着かせるためにお酒を飲みまくりましたが、全然酔いませんでした。すぐにでも帰りたい気持ちでいっぱいでした。歓談中にも新婦側の友人スピーチがあり、面白い話で場は盛り上がっていました。それを見てさらに落ち込んでしまいました。まじめな性格の自分は、うまくスピーチ出来なかった自分と、スピーチの順番を教えてくれなかった友人に対する気持ち、怒りと情けなさが入り混じった感覚でした。二次会は欠席しました。自宅に戻った私は何にもする気がおきず悲しくなりずっと寝ていました。後日、友人の母親が私のスピーチのお礼にきて「いい挨拶だったよ」と言った時のあの表情は忘れられません。友人からのお礼の連絡はありませんでした。この時以来、この友人とは会っていません。これがトラウマとなり、数十年苦しむことになります。

受診に至るまで

結婚式後、会社の会議で自分の異変に気付きます。会議の初めに所員が順番に自己紹介をする時間があり、自分の番で立ち上がって話そうとすると、足が震え始め声が出しづらいのです。自分の名前と担当先、そして一言挨拶するだけなのに緊張してうまく言えません。挨拶が終り着席すると手が震えていることに気づきます。会議後、自分の異変に気付き、この前のスピーチが原因だとすぐに思いましたが、自分は割とのんきな所もあるので、時間が経てば治るだろうとこの時は軽い気持ちで思っていました。しかし、その後も会議のたびに同じ現象に陥り、全然改善されない状態に悩みました。自分はあがり症になってしまった。何とかあがり症を克服しないとこれからの仕事に支障が出ると考えあがり症対策を探します。あがり症克服の本を読み漁りいいと書かれていることは色々試しました。ネットや本であがり症を調べても、ほとんどは場数を踏んで慣れろとか、事前に徹底的な反復練習をすることとか、ボイストレーニングが効果的など、対処療法のことしか書いていませんでした。あがり症を克服したい私は、まずは徹底した事前の反復練習を行いました。しかし、いくら練習しても症状は改善されません。ボイストレーニングは怖くて行けませんでした。この時はあがり症が病気だなんて想像もしていませんでした。性格の問題だと思っていました。あがり症が全く改善されない中、自分なりに考えやっていたことは、ボイスレコーダーを買って自分の声を録音し、自宅や車の中で何度も聞いて反復練習をこなしていました。ですが事前にそこまでやっていても、会議が始まりしっかり話そうと思うとさらに緊張感が高まるのです。色々と話したいことがあっても、いざ話し始めると足と手が震え頭がまっしろになるのです。こんなことが続き人前で話すことが、本当に嫌になりました。嫌というより怖くなりました。数年間こんな状態でしたので常になにか改善する方法はないか考えていましたが、さらに自分を追い込むことをしてしまいます。会社には労働組合があったのですが30歳の頃、組合から執行部への勧誘がありました。仕事面で会社への不満もあった私は会社がどういう考えのもと仕事が進められているのか内情も分かるし、話す場面もたくさんあるので、人前で話すことが慣れるかも、あがり症を克服するチャンスだと思い執行部へ立候補しました。組合活動自体は、様々な人たちと話ができてやりがいもありました。組合活動をしていて気付いたことは、オルグ(職場集会)でフランクに話し合う場での発言はまったく問題ないのですが、人の目が自分に集中する最初の挨拶をする場面が一番緊張するということです。集会が始まるまでに周囲の社員とフランクに話しリラックスムードを作っても、いざ挨拶の場面になると足が震え始めます。それに気付くとますます緊張感が高まり、うまく話せなくなるのです。ですが一旦挨拶が終ると緊張感がほぐれ、そのあと話す時にはほとんど緊張しないのです。執行部には10数年在籍し、支部長、書記長、最終的には委員長になりました。挨拶は嫌でしたが組合活動事態には意義を感じていたので熱意はありました。まさか委員長になるとは思ってもいませんでした。書記長の時、組合活動中の挨拶が嫌すぎて仮病で休んだり、嘘の用事で大会を欠席したりしていました。そのくらい辛かったのです。委員長になると責任の重さから、さすがに欠席することはしませんでした。やりがいはありましたが会議の初めの挨拶をすることが辛く次の会議までが不安で、ひたすら挨拶の練習をしている地獄のような日々を過ごしました。委員長は、課長(非組合員)になるまでの3年間やりました。課長になり委員長のストレスからは解放されましたが、あいかわらず挨拶は本当にダメでした。その後50歳手前で営業所の所長になりました。所長になったタイミングで、コロナの流行が始まりました。所長昇進の人事が出た時には、また人前で話すことが多くなるけどうまくできるだろうかと不安でした。しかし、コロナのお陰で会社から出ることも得意先への訪問もほとんどなく、会議もWEBだったのでなんとかやり過ごしていました。所長になったこの年、父親が亡くなりました。このことがきっかけで心療内科に行くことになります。というのが私は長男なので喪主をすることになりました。家族葬なので母、弟夫婦、義理の妹の両親と数人しか参加していないという状況にも関わらず、喪主の挨拶のことを考えると憂鬱になりました。親の葬儀での挨拶なのに、こんな事を考える自分が情けなく嫌になり、心の底からあがり症を克服したいと思い改めてネット検索をしました。すると私とまったく同じ状況、体験談が書かれており、しかもそれが改善されたと書いてあるHPを見つけたのです。それは心療内科のHPに書かれていたものでした。そこで初めて社交不安障害のことを知りました。心療内科ということもあり予約するのに少し躊躇しましたが、勇気を出して予約し受診しました。

心療内科受診

まずは、お医者さんの診察前に、看護師さんからヒアリングがありました。学歴、悩んでいる症状など、現状の確認です。学歴を聞かれたのには驚きました。その後、医師の診察です。症状を伝えると、すぐに社交不安障害だと診断されました。薬で克服できるとのこと、認知療法も併せて行えば薬を飲まなくてもよくなるかも?とのことでしたが、薬はいまだに飲んでいます。所長を続けている限り通う必要があるようです。SSRIとリーゼという頓服が出ました。この薬は、米国で開発されたそうです。アメリカ人は、私と同じような症状が出た時、日本人のように自分が悪い、度胸がないからだなどという発想はないらしく、自分が悪いんじゃないこれは病気で、病気のせいでこんなことが起こっているのだと考える様です。その発想から、この薬が開発されることになったそうです。

服用後の状況

服用開始してすぐに、寝汗の副作用がありました。朝起きると膝から下が、汗でびしゃびしゃになる状態が数日続きましたが収まりました。それ以外、特に変化は感じません。本当に効いているのか?と不安になりましたが、診察後、初めての会議でしかも半期に一回の所長発表がある日、初めて頓服を飲んで臨みました。頓服の血中濃度のピークは服用後、30分でピークに達します。そこからゆっくり下がり効果は数時間です。発表の30分前の休憩時間にトイレに行きこっそり飲みました。いよいよ私の発表が始まります。持ち時間は15分。いつも通りドキドキしています。本当に効いているのか不安になりました。しかし、いざ話し始めてみると手足の震えは起こりません。それに気づくと逆に落ち着いてプレゼンをすることができました。もうビックリです。今までの苦労が報われた気持ちになりました。今までプレゼンの練習はさんざんやってきましたが、本番では緊張でうまく話せなかったのに、自分でも満足のいくプレゼンができたのです。今までの練習は無駄ではありませんでした。プレゼンの技術はしっかり身についていました。プレゼン後、他の所長からすばらしかったと褒められました。その時のうれしかった気持ちは忘れられません。会議の予定が入る度に本番までの日数がとんでもないストレスだったのですが、そのストレスは全くなくなりました。もっと早く受診していればと後悔しましたが、私にとって一番のストレスがなくなり気持ちに余裕ができ、今ではプレゼンが得意だと自信にも繋がりました。頓服は3回分カバンに忍ばせています。向精神薬という薬の特性上3週間分しか一度に処方できないため、3週間おきに通院しています。頓服は使ったら補充という感じです。診療内科に通っている患者さんは、性別、年齢様々です。見た感じは普通の人ばかりです。予約制ですが、いつも30分くらい待ちます。心療内科にかよう患者さんて多いんだなと感じました。色々な疾患があり通っているのでしょう。私と同じような悩みを抱え、克服のための努力をしているにも関わらず成果が出ない人がいたら、絶対に診療内科をお勧めします。薬で改善します。日々の大きな悩み事がなくなります。あがり症は恥ずかしい事ではありません。病気なのです。軽い気持ちで受診してみてください。先生たちは理解してくれます。今では人前で話すストレスと会議がある日までの嫌なストレスはまったくなくなりました。それだけで日々余計な心配がなくなるので気が楽になりました。

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